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2025.03.1921:17

LIFE WORK | 快速急行

快速急行
作詞:田村 晴信
作曲:田村 晴信, 171
編曲:171

夕焼け空が
ドブ川を茜色に染めるよ
快速急行が
あの日の2人をあの日の町へ

5年そこらで
人も街も変わるもんだね
今はわかるよ
人の事情も街の事情も

ごちゃついた匂い
酔っ払いであふれて
君はずっとここが嫌いだったろう
街と街の間
ぽつり浮かんだネオン街
十三駅に日が落ちる

夕焼け空が
ドブ川を茜色に染めるよ
快速急行が
君のいない僕の町へ

あのとき あーしていれば
このときに こーしてれば
手遅れだって わかってるのに
わかっているのに

2人だけの部屋
2人だけであふれて
君はずっとそれが嫌いだったろう
人混みに紛れて
隠れるように身を寄せて
小部屋の窓に日が落ちる

ごちゃついた匂い
酔っ払いであふれて
僕はどしてここがこんな好きなんやろね
今日と明日の間
はりぼてのネオン街
十三駅に灯りがともる

今この夜は
君の目も街の色に染めたか
今は準特急が
僕を乗せて明日の町へ


●阪急ユーザーの集合地点、十三駅

関西以外の人のために、十三(じゅうそう)がどんな町なのか軽く解説しておく…。

阪急電鉄の大阪側の終点は大阪梅田駅。
梅田駅から見て淀川を挟んだ対岸に存在するのが阪急電鉄十三駅であり、京都本線 / 宝塚本線 / 神戸本線という阪急電鉄の3路線の接続駅として機能している。



要するに、京都の人が神戸に行こうと思ったり、宝塚の人が京都に行こうと思った場合、十三駅で乗り換えるシステムになっているのだ。

十三駅に乗り入れている路線は阪急電鉄の3路線のみで、他社鉄道路線の駅は存在しない。
川向こうの梅田エリアが国道1号の終点かつ国道2号の始点でもあり、阪急大阪梅田駅、JR大阪駅、阪神大阪梅田駅、大阪メトロをはじめ様々な鉄道路線が乗り入れていることとはある意味対照的と言える。

国道176号(イナロクと呼ばれる)沿いであるため十三が阪急頼みの町というわけでは全くないが、「阪急ユーザーの集合地点」という意味合いが非常に強い町…だとは思う。
例えば、大阪大学の友人と飲もうと思うと十三になったり、神戸に転勤した友人と飲もうと思うと十三になったり。実際、171の3人で集まる際も十三エリアだったりする。

先ほど「阪急ユーザーの集合地点」と言ったが、もっと言えば、「阪急エリアで都市をまたいで遠距離通勤/通学をしている人たちの集合地点」であり、十三で飲むという行為には、「毎日家から遠いのしんどいよな」という傷の舐めあいが裏テーマであることも多かった。(田村調べ)

阪急エリア、すなわち京都-北摂—西宮-神戸-宝塚。
要するにそれは、国道171号沿いの街である。
十三という大阪の小さな町は、大阪都心の住民よりむしろ、「イナイチエリア(≒大阪都心にとってのベッドタウン)」の住民にとって重要な意味をもっていると言ってしまってもいい。かも。

なんだか固い文になってしまったけれど、要するに十三で久々の人と会ったり、十三で間違えて終電をなくす人が結構多いんです。

周囲は普通の住宅街なのに、ネットカフェ / 居酒屋 / 飲食店 / 夜のお店 / ラブホテル / カラオケなどなど、1夜を明かすための設備が駅の周りにギュッと固まっているちょっと変なつくりの町。
私にとって、十三はそういう場所です。ラーメン屋さんとか、全部おいしいよ。


●「ごちゃついた匂い」について


「ごちゃついた匂い」のところの歌詞は、もともと「ゴミだらけの道」という歌詞にしていた。
しかしこれが気に入っていなかった、別に十三ってゴミが落ちてるイメージはない…。

何よりも、十三をいい町にしようと頑張っている人が聴いて悲しい気持ちになる曲にはしたくなかった。

レコーディングの直前、大学の後輩のK君とたまたま会う機会があった。
彼は大阪生まれ大阪育ち、今は西成あたりの会社で働いていると聞いて、この曲の話をしてみた。

やはり「十三ゴミ落ちてるイメージはないっすね」と返ってきて、どうしたものかと考えていたところ、「なんかいろんな匂いが混ざってる印象はあります」という凄く大きなヒントをくれた。
私は生まれてこの方慢性鼻炎かつ口呼吸なのであまり匂いを意識して町を歩いたことがなく、すごく新鮮な意見だった。
十三を嫌いな理由も、十三を好きな理由もよく分かる、深みのある歌詞になったと思う。本当にありがとう。


●「快速急行」について


2022年12月17日、阪急のダイヤ改正によって、「快速急行」は「準特急」へと名称が変更された。

私は、阪急京都線の「快速急行」ラストランに乗っていた。
狙って乗ったわけではなく完全なるたまたまだった。
京都の実家から神戸の大学まで通っていたころ、大宮・西院・六甲という私にとってありがたい駅に停車してくれる快速急行には非常にお世話になっていて、特別な愛着があった。

快速急行廃止の話は知っていたけれど、多分乗ることはないかなと思っていた。
ダイヤ改正前日の12月16日、たまたま私は仕事で大阪の住之江あたりまで赴いていた。
たまたまそれが早く終わったので、たまたま気まぐれで神戸に遊びに行って、たまたま以前バイトしていた居酒屋に行った。
たまたま何人かの知り合いが遊びに来てくれたのでそこそこ盛り上がって、たまたま阪急に飛び乗って、十三駅で乗り換えた京都線の終電こそが、阪急の快速急行ラストランだった。
電車を降りたら結構な数のカメラマンがプラットホームに集まっていて、ようやく自分がラストランに乗っていたことに気がついた。
写真の1枚でも撮ればよかった。逆に、誰かの写真に僕が映り込んでいる気がするけれど…。
完全に鉄道ファン失格の失態だが、最後の快速急行を「ただの終電」として乗れたのは、それはそれでよかったなとも思った。
そのときから、いつか「快速急行」という曲を作ろうと思っていた。思った以上にいい曲ができたと思う。


●今気づいた失敗について


この曲には重大なミスが1つあることにさっき気付いた。(ショック)


2022年12月17日のダイヤ改正以前、阪急京都線の京都河原町行き終電は、「23:45大阪梅田発 快速急行」だった。
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/dd2e3f9dbc4759095b47e378f4d54e59336a79ac.pdf
この電車に乗ると、私が当時使っていた西院駅には0:24着。ちょうど電車内で日付を越すことになる。
つまりガチで明日の町行きの列車だったわけで、この曲の最後の1文、「僕を乗せて明日の町へ」というのは超オシャレなダブルミーニングなんです。

ところが!笑
私は、ダイヤ改正後の京都行き終電は「準特急」だと思いこんでいたのだが、実際は深夜の利用客数減の煽りを受けて、「23:45大阪梅田発 急行 」に変更されていた。
準特急の終発は23:00発であり、終点:京都河原町駅に着くのは23:44。
準特急は明日の町には行かない…。

ただ、今調べたところによると、神戸線の梅田行きの終発は「23:30 神戸三宮発 準特急」で、大阪梅田駅に0:01着らしい。やったぁ! 

ただし、「今は準特急が 僕を乗せて明日の町へ」と歌うためは、この電車に僕が乗ってないといけない。これは困った…。

これをやると一度0:01の梅田駅に降り立つ必要があるけれども、先ほど申し上げた通り京都行きの終電は16分前に出発済みであり、梅田のクソ高いネットカフェなどで夜を明かす必要がある。

まぁ、23:44着の準特急に乗ったところで、コンビニ寄って、なんやかんやして家に着く頃には日付が変わっているんだけれども。それでいっか、それでいい、それでいい…。

なんだか最終的に西村京太郎サスペンスみたいな内容になってしまって、申し訳ない。

今作のレコーディング中、作業が深夜まで続いてしまい、0時を少し回った日があった。
エンジニアの濱野さんが時計を見て、「もう『今日』になってんじゃん。昨日も今日だったのに…」と呟いていた。

23:45発 快速急行の車内で、たくさんの人が同じことを思っていたと思う。


2025/03/19 

文責:タムラ

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