2026.02.0518:17
HELLO! | グレモンハンドル
グレモンハンドル(Soundproof Handle)
作詞/作曲:田村 晴信
編曲:171
ひとりぼっちの部屋で
テレビを消した
あの瞬間より静かな場所を
確かに僕は知ってる
誰も彼もが家に
帰ったあとの
防音壁の向こうには
町明かりすら届かない
教えてくれよライブハウス
どこかに飛び出してしまいたい思いを
どこにも連れて行けないまま
僕ら大人になったのか?
MIDNIGHT 誰もいなくなった
ライブハウス 暗闇の中
重たい扉の向こう
この町で1番静かな場所
100Wのマーシャルと
SM58のウィンドスクリーンは
重たい扉の向こう
ロックバンドの帰りを待ってる
あなたが眠る横で
寝たふりをして
音量ゼロのスマートフォンが
青く照らしたアパート
パンクロックの列車は
この町を出て
後ろ姿を皆が憎んで
僕は祈っているだけ
教えてくれよライブハウス
君が聞いたみんなの夢と後悔を
どこにも連れて行けないまま
知っているだろライブハウス!
教えてやるよライブハウス
どこかに飛び出してしまいたい思いを
ここに預けていいと聞いて
僕ら報われない涙を
Squierのフレットボードに
Grass Rootsのフレットボードに
Epiphone、Morris、Behringer、PLAYTECHに
レンタルスタジオのスネアドラムに!
SOLD OUT!! 息が詰まりそうな
ライブハウス 爆音の中
重たい扉の向こう
この町で1番うるさい場所
100Wのマーシャルと
SM58のウィンドスクリーンは
重たい扉の向こう
お目当てはどなたですか?
2025年初頭にはできていた曲。
refrainで足音と一緒にリリースする案も提案いただいたのだが、「この曲はメジャーデビュー曲じゃないと嫌!!」と反対を押し切って1年近くあたためていた。
「171の魅力」みたいな部分を箇条書きにして全部入れて、ポップなメロをつけましたみたいな曲なので、あんまりこういう曲を乱発したくないという思いがあった。
●グレモンハンドルについて●
みなさんはグレモンハンドルという言葉って知ってましたか?
僕は知りませんでした、僕が知ったのは平沢進先生のこの一連のツイート。
https://x.com/hirasawa/status/1589598541822849024?s=46
https://x.com/hirasawa/status/1589599548116189190?s=46
私が高校生のときに最初に組んだバンド「盆地団」は何を隠そうP-MODELのコピーバンドだった。
そのくらい、平沢進先生からは多大なる影響を受けている。
高校生当時、私も友人たちも、P-MODEL以外のパンクロックをほとんど知らなかった。
初期P-MODELに含まれているパンク成分を、冒涜レベルで拡大解釈していた。
当時銀杏BOYZを聴いてなくてよかったな、と思ったりもする。
私たちは初期P-MODELに自分たちのフラストレーションを混ぜ合わせて、銀杏BOYZを再発明しようとしていた。
いや……あれは完全にオリジナルの初期衝動だったかも。
銀杏BOYZは、P-MODELよりも数歩だけ初期衝動の源流に近いところにいるバンドというだけかもしれない。
近年の平沢氏は、数年に一度「活動期」と呼ばれる時期にドカっとライブや露出が増える。
それ自体は珍しいスタイルじゃないとは思うが、氏の面白いところは、Twitterの文章の難解さがこの活動期とリンクしているところ。
10年くらい前まで平沢氏のアカウントは、失礼ながら怪文書と言っていいほど難解で…笑
フジロックに出演された頃からはかなり、私たちの理解力にあわせた投稿をしていただけるようになった。
そんな折に上に貼った2つの連投が私のTLにも出てきたのだが、分からない用語くらいこっちにググらせれば良いものを、わざわざ画像付きの注釈をつけるという親切が、かつての平沢氏のポストを思うとかなり衝撃的だった。
平沢氏はパンクもテクノもプログレも日本で馴染んでいない時代にそういった音楽をやっていただけあって、「アンチ・ギターロック」という精神がかなり強いお方。
まぁそれは、ほとんどツンデレみたいなものなのだが、171のようなバンドは好きじゃないだろうなと思う笑。
少なくとも171の「グレモンハンドル」のようなライブハウス讃歌、ギターロック讃歌を歌うことは絶対ない。
でも、私はP-MODELの後を追いかけてバンドを始めたわけで、そんなツンデレ先生もかつて私たちと同じようにギターバッグを背負って、ライブハウスやスタジオの防音扉を開けていたと思うとなんだかとても嬉しかった。
折角、平沢氏が嫌がりそうな音楽をやってる身分なので、平沢氏に教えてもらった「グレモンハンドル」 という言葉をロック讃歌にまとめあげてしまおうと思った。
これはもう嫌がらせに近いのだけれど笑
P-MODELを私はロックバンドだと思っているということ。
平沢進は私のギターヒーローの1人だということ。
何より、我が愛するライブハウス、その防音扉に私が導かれたのはP-MODELのおかげだったということを、ここに書き残しておきたい。
●歌詞について●
この曲の歌詞は色んなところで書き溜めていた歌詞を混ぜ合わせて作った。
本当の大元は、2023年9月に新宿Marbleで開催した爆風マグマ音相撲で、アンコール前にしたMC。
最近の自主企画では定番になっている、「田村の長話」はこれが初めてだった。
私の大学の友人であり、GO GO イナイチでも出演してくれた小村幾太郎くん。
幾太郎は大学入学当初ゴミMCメイカーとして知られていたのだが、2回生の途中くらいから突如めちゃくちゃ良いMCを連発するようになった。
多分、幾太郎は借り物の言葉に頼らずに、ずっと自分の気持ちをしたためてMCをしてきたからこそ、ある日MCが武器になるシンギュラリティみたいな瞬間が訪れたんだと思う。
何を隠そう私もかつてはゴミMCメイカーとして知られていた。
でも体力的にも絶対MCの小休止は必要だったので結成当初から私は頭を悩ませていて……。
2023のバクマグで、「遂に俺にもシンギュラリティが来た」と思ったのを覚えている笑
この日は爆マグ初の東京編で、初のソールドアウト公演だったこともあり、「このMCはいつか曲にして残そう」と決めていた。
あと、ここで宣言しておきたいが、「グレモンハンドル」はGROWLYに捧げる鎮魂歌のつもりで作ったわけではない。
もちろん、GROWLYへの想いはむっちゃくちゃ含まれているけど、この曲で言ってる「ライブハウス」は文字通りこの世の全てのライブハウスを指しているつもりである。
2024年末に、京都GROWLYが閉店した。
私の実家の最寄りライブハウスだったし、高校生の頃から足を運んでいた場所だった。
とてもとても悲しい。
私はGROWLYに関わった人たち全てをリスペクトしている。
私がGROWLYの閉店をそういう風に受け止められているのは、安齋さんたちチームGROWLYの尽力あってのもの。
閉店に際して、SuperBackの丹野と2人で「おやすみライブハウス」という曲を作った。
詳しくは「おやすみライブハウス」の雑記に書いたけど、『LOST IN THE ライブハウス』と『グレモンハンドル』では「GROWLYをオカズにしたオナニーになっちゃうから『おやすみライブハウス』に入れられなかった歌詞」を色々再利用している。
上の方で「GROWLYに捧げる鎮魂歌のつもりで作ったわけではない」と書いたのはそういう意味。
もちろん、GROWLYの件がなかったら作れなかった曲だし、GROWLYに入り浸っていたみなさんがGROWLYのことを思い出しながら聞いてくれたら嬉しいな…とすら思うけど、「GROWLYに捧げます」って言うにはこの曲の歌詞は致命的にカッコつけすぎている。
そういう意味でも、PVをFireloopで撮れたのはすごくよかった。
Fireloopには本当に色々お世話になった。
撮影前日に、ドラムのスタンド類を手配していないことが判明して、急遽レンタルさせていただいたり…。
撮影前日に、ライブシーンの照明を手配していないことが判明して、急遽ノダさんに採譜して照明を考えてもらったり。
おかげさまで、本当にいいPVになった。
●PVについて●
チームのみんなで集まって、2日間かけて関西中を駆け巡って撮影したPV。思い返すととても楽しかった。終わるまではドキドキでした。
元々この曲のPVは、「ライブハウスの締め作業をドキュメンタリみたいに写して、背後でピンボケした171が演奏している」みたいなものを考えていた。
のだけれど、流石にメジャーデビューPVの映像としては退屈すぎるのでは…ということで、マニさんが今のような形に書き直してくれた。
曲の世界観と、ライブハウスへの想いみたいな部分を分かりやすく説明しながらも、見てて面白くてちょっぴり不思議な、本当に良いPVを撮っていただいた。
本当にありがとうございます。
YouTubeショートでも紹介しているけど、カメラマンの野田さん(Fireloop照明の野田さんとは別人)は撮影1週間前にギターソロをコピーさせられ、ギターとヘルメットカメラを担ぎながら撮影するという非常に過酷な役割を担っていただいた。
本当にありがとうございます。
こういう、色んなところに音楽を通してワープしていく…みたいなPVは、バンドを結成した初期からずっと頭の中で思い描いていた。今回自分が想像していたよりずっと素晴らしい形で映像作品にできて本当によかった。
171として初めてエキストラを入れた撮影でもあった。日曜の朝9時という非常識な時間での募集にもかかわらず、100人の方々が集まってくれた。ちなみに、その時点では「メジャーデビュー曲です」とも「アルバムが出ます」とも言っていない。
本当にありがとうございました。
PV撮影って、ライブよりよっぽど疲れるので、演奏シーンの撮影は結構省エネしながらいつもやっている。
例えばドラムのアップを撮影するとき、ギターはほぼ映らないので休んでたりとか。でもエキストラの皆さんが結構頑張って盛り上げてくれていたので、ステージ上の我々がサボるわけにいかず笑、非常に体力を使う撮影だった。
でも、いつもの撮影のときの無理して絞り出すテンションじゃなくて、もっとライブハウスでのライブに近いものが出せた、本当に皆さまのおかげです。
サムネをどこにするかは非常に悩ましいところでして、サムネが良くないぞというご指摘を色んな人から受けたんですが…笑。
歌ってる部分だと字幕が入っちゃう(サムネだけ抜いてもいいのだけれど、Apple MusicでのDSP配信だとそれができなくて、Apple MusicとYouTubeのサムネを別にするってのがVictor社内的にちょっと面倒くさくて、みたいな言い訳があります)のだが、この曲のサムネは「メンバー全員が写ってるか、誰も写ってないか」にしたかった。
どうせ悩むなら、映像作品としてはグレモンハンドルがサムネに写っててほしいなぁ、と思い今のサムネイルにしました。
普通のサムネにしたくない気持ちもあり。
でももしかしたら変えるかもしれません。考えておきますね。
はっきり言って、絶対SUPERSONICのほうが再生回数とか回るだろうなとは感じていた。のだけれど、この曲はPVも含めて、ライブを重ねながら「171の代表曲」として育てていきたいと思っているし、実際みなさんのおかげで育ってきている感覚がある。
本当に嬉しいです、ありがとうございます。
●Fireloopについて●
あとFireloopの話をもう少し。
実はPV以前にも、この曲に関する相談をFireloopに乗ってもらっていた。
「SM58のウィンドスクリーン」という言葉はナンバーガールのTOKYO FREEZEからの引用なのだけれども、この一節は非常に悩んだ部分だった。
TOKYO FREEZEでは、「俺はときどき、マイクロフォンShure SM58のウィンドスクリーンを掴み狂い」と続く。
この歌詞は凄い。
※ここからはわからない単語を逐一調べながら読んでください
「掴み」という3文字で、58のグリルボールのことを「ウィンドスクリーン」と呼んでいることを伝えている。流石。
でも「グレモンハンドル」ではそうじゃない…。
ウィンドスクリーンじゃなくて、「ダイヤフラム」にするか非常に悩んだ。
悩みすぎてFireloop店長の足立さんにLINEをした。
「グリルボールと中のスポンジを指して「ウィンドスクリーン」と言いたいんですが、普通「58のウィンドスクリーン」だとグリルボールに被せる後付けの風防を想像しますよね?」
と聞いて、
「そうやねぇ……」
と帰ってきた。
悩んだ果てに、「ダイヤフラム」は語呂が悪いので、足立さんの発言は忘れることにした♪
すみませんでした。
●この曲の成り立ち●
あとこの曲の成り立ちに関しても。
2024年10月27日のNew Order Circuitの出番終わりに、他のバンドを見に行こうと道を歩いているときにふと、サビのメロディと歌詞が思いついてしまい、一旦駐車場に戻って車の中でボイスメモを残したのを覚えている。
New Order Circuitは、何を隠そうFireloopの安井さんが組んだイベント。
これで、「この曲を京都GROWLYに捧げます!!」とか言ってしまったら不義理もいいところである。
●SM58●
PV撮影用に色んな知り合いに「ボロい58を持ってないか」と聞いて回って、ある人から壊れたボロい58を貸してもらった。
ご本人の希望でお名前は書きません。
Fireloopのシーンで僕が使ってるやつとか、Cメロで主人公の目の前に現れる58がそれ。
カナが使ってるのはFireloopの58である、Fireloopの58使わないと曲の趣旨としておかしいので笑
京都GROWLYの58はサビだらけでベコベコに凹んでいて、とてもカッコよかった。
あれよりカッコいいマイクを私は見たことがない。
なので、『おやすみライブハウス』の歌詞でも言及した。
GROWLY閉店後の後片付けに図々しくも私は参加して、ゴミ捨て場に放置されていた機材を色々とお土産に持たせてもらった。
「ここの58ほしいなぁ」と私が言ったら、むらぴーか誰かが「1本くらい別にええよ」って言ってくれたのだけれど、なんだかそれはできなかった。
58は本当に私にとってGROWLYの一部に近いというか、建物の壁を壊して持って帰るような気分になったというか…。
GROWLYビルと一緒に、Rokaの一部になるべきだとそのときの私は思った。
……やっぱ貰っときゃよかったかなぁ〜〜〜
いや、この度事務所から僕用のSM58を買ってもらったので、同じくらいボロボロになるまで使おうと思う。
うん。それがいいと思う。そしよう。
ここで問題です。SM58をボロボロにするにはどうすればいいでしょうか?
………
シンキングタイム……
………
正解は、「大事に扱う」です。
実は、あんまりライブハウスにボロい58ってないんです。
なぜなら、ライブハウスの58は塗装が剥げる前に壊れてしまうから。
Studio246の58なんかは、黒の塗装が剥げ切って青いマイクみたいになっている。
もしあなたがボロボロのSM58を見たら、誰かが毎日メンテナンスしている姿を想像してあげてください。
2026/02/05
文責:田村
